多汗症

      多汗症は、汗の量が異常に増加してしまう疾患です。汗をかく部位により分類されます。

      ・全身性多汗症:全身の汗が増加します。特段原因のない特発性もありますが、原因に甲状腺機能亢進症や糖尿病、低血糖などの疾患を有する場合や薬剤性、妊娠、肥満などによっても多汗になります。

      ・局所性多汗症:脇や手のひら、足の裏など体の一部に限局して汗が増加して、日常生活に支障をきたすことがあります。

      症状

      幼少児期ないし思春期ころに発症し、手のひら、足のうらは精神的にストレスがかかると特に汗の量が多くなります。多汗症の症状が強い方は、したたり落ちる程の発汗がみられます。寝ている時は局所性の発汗がみられないのも特徴の1つです。

      原因

      1. 交感神経の影響

      発汗を促す交感神経が人よりも興奮しやすいのではないかともいわれていますが、まだはっきりしたことはわかっておりません。


      2. 遺伝的背景

      海外では多汗症患者で60~65%に家族内に同じような症状の人がいた(家族内発症)との報告や遺伝形式が常染色体優性遺伝が疑われるとの報告があります。

      治療法

      1. 内服薬

      アセチルコリンという神経伝達物質を抑制する抗コリン剤(プロ・バンサイン)を服用することで汗を抑えることが可能です。

      全身の汗の総量を抑えますが、効果にバラツキがあること、口の渇きや眠気、便秘などの副作用があるので慎重に使用します。服用に際して、閉塞性緑内障や前立腺肥大といった疾患をお持ちの方には服用いただけまません。


      2. 外用薬

      保険適応の薬はエクロックゲル®」と「ラピフォート®」があります。残念ながらワキの多汗症にしか保険適応がありません。汗腺のアセチルコリンの働きを局所でブロックすることで汗を抑えます。1日1回の外用で24時間効果を発揮します。内服と同様に緑内障や前立腺肥大の方は使用することができません。

      み薬と並行して行いやすい治療として「塩化アルミニウム溶液」を患部に塗る方法もあります。塩化アルミニウム溶液は、汗を出す管の細胞に働きかけ、これを塞ぐことで発汗量の減少を狙います。こちらはどこにでも使えて、有用性も広く認められますが、かぶれやすいので使い方に注意が必要です。※皮膚に異常が出た場合は用量、使用頻度を見直し適切な塗り薬による治療を同時に行い、多くの方は治療継続が可能となります。

      3. イオントフォレーシス治療

      汗の多い手のひら、足のうらを水道水の入った容器の中に浸し、直流電流を流す方法です。陽極側で電気分解で生じた水素イオンが、汗腺に作用して発汗を抑えると考えられています。

      汗を抑える効果も高く、副作用も少ないため、利用しやすいことが特徴です。しかし1回の治療に20分かかることや、週1回~2回の通院が必要な点がデメリットとなります。


      4. ボトックス治療

      ボトックスとは、ボツリヌス毒素(ボツリヌス菌が産生する毒素)から抽出した成分を用いる治療です。ボツリヌス毒素はその名の通り、毒性の高いものなのですが、ボトックスはそこから毒性を除去しているので、安全に使用できます。皮下にこのボトックスを注射して、交感神経から汗腺への刺激の伝達をブロックすることによって発汗を抑えます。手足、わきなどに用いられます。非常によく効く治療法なのですが、ボトックスの効果はずっと持続するわけではなく、効果の持続期間が3か月から長くても6ヶ月くらいなので、継続的な治療が必要です。保険が効く場合、自費診療の場合があります。